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大学1年生の君へ。ホームシックと「寂しい」の正体──恋人だけが心の穴を埋めるわけじゃない

「もうダメかもしれない…」「なぜ俺だけがこんなに孤独なんだろう…」

大学1年生の春、健太はスマホの画面を見つめながら、心の奥底でうめき声を上げていた。GW明け、実家から飛行機の距離にある大学での生活は、期待と不安が入り混じったものだったはずが、今では不安だけが胸を締め付けていた。親と電話するたびに、声が震え、涙がこみ上げてくるのを必死でこらえた。受話器の向こうの母親の優しい声が、かえって健太の心をえぐった。「情けない…本当に俺は情けない人間だ」。

昼間はなんとか授業に出て、周りの楽しそうな学生たちに紛れて笑顔を作る。しかし、放課後、誰もいない自分の部屋に戻ると、その仮面は剥がれ落ち、底なしの孤独感が襲いかかる。週末に買い込んだコンビニ弁当を冷めたまま口に運びながら、健太は窓の外の夜景をぼんやりと眺めた。「あいつらは、みんな友達と笑ってるんだろうな…」。SNSで流れてくる、地元で楽しむ友人たちの投稿を見るたび、胸の奥がキリキリと痛んだ。

特に、授業中に隣の席で楽しそうに話すカップルや、食堂で肩を寄せ合う恋人たちを見るたび、「もし、俺にも彼女がいたら…」という切実な思いが募った。一緒に授業を受けて、ご飯を食べて、他愛ない話をして。そんな些細な日常が、今の健太には何よりも尊く、手の届かない夢のように思えた。「この寂しさは、彼女がいなきゃ埋まらないのか…?」。彼は何度も自問自答した。かつて、塾で分からないことを質問できなかった内気な性格が、新しい環境での人間関係構築にも影を落としている気がした。声をかけたいけれど、何を話せばいいのか分からない。一歩踏み出す勇気が、どうしても出なかった。

しかし、立ち止まってほしい。その「寂しい」という感情は、本当に恋人がいなければ埋まらないものなのだろうか? 穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるように、一時的に誰かで満たしても、その穴を塞がなければ、またすぐに空っぽになってしまう。今の君に必要なのは、その穴を塞ぎ、自分自身の力で新しい水源を見つけることなのかもしれない。

寂しさの正体と向き合う勇気

君が今感じているホームシックや孤独感は、決して「情けない」ことではない。それは、新しい環境に適応しようと必死に頑張っている証拠であり、故郷や家族への深い愛情の表れだ。そして何より、君が「本当の自分」と出会い、精神的に自立するための大切な通過点なのだ。

この寂しさを乗り越えるために、恋人を探すことだけが唯一の道ではない。むしろ、この時期にこそ、君自身の内面と向き合い、多様な「心の拠り所」を築くことが、未来の君を強くする。

新しい自分を見つけるための3つのステップ

1. 「小さな一歩」でつながりを広げる

  • サークルや部活動に参加してみる: 興味のあることなら何でもいい。共通の話題がある仲間との出会いは、驚くほど心を軽くしてくれる。最初は見学だけでもOK。
  • アルバイトを始める: 大学の外で、全く違うコミュニティに飛び込むのも一つの手。多様な年代の人と接することで、視野が広がり、意外な発見があるかもしれない。
  • 大学のイベントに顔を出す: 新入生歓迎会や学祭の準備など、期間限定のイベントでもいい。短期間でも協力し合うことで、顔見知りが増え、自然と会話が生まれる。
  • 授業で隣の席の人に声をかけてみる: 「この課題、どうやるんですか?」など、きっかけは些細なことで構わない。小さな会話の積み重ねが、やがて大きなつながりになる。

2. 「自分だけの時間」を充実させる

  • 新しい趣味を見つける: 読書、映画鑑賞、プログラミング、筋トレ、散歩…。一人で没頭できる時間を持つことは、心の安定に繋がる。
  • 自炊に挑戦する: 自分で料理を作ることは、生活の基盤を整えるだけでなく、達成感や満足感を与えてくれる。栄養バランスの取れた食事は、心の健康にも直結する。
  • 大学のカウンセリングを利用する: 専門家と話すことは、自分の感情を整理し、客観的に状況を理解する上で非常に有効だ。決して恥ずかしいことではない。

3. 「故郷との新しい関係」を築く

  • 電話の頻度や内容を見直す: 毎日電話するのではなく、週に1回など頻度を減らしてみる。そして、愚痴や寂しさだけでなく、大学での楽しい出来事や挑戦していることを話すように心がける。
  • 手紙やメッセージを送る: 声を聞くと泣きそうになるなら、文字で気持ちを伝えるのも良い。自分の成長を報告することで、家族も安心し、君も前向きな気持ちになれる。
  • 次の帰省を目標にする: 次に帰省する時の楽しみを具体的に想像することで、日々の頑張りのモチベーションになる。

寂しさは、君が新しい自分に出会うための招待状

健太君、君が今感じている寂しさは、決して無駄な感情じゃない。それは、君が「心の居場所」を求めている証拠であり、もっと深く、広く、人生を豊かにしたいという願いの表れなんだ。恋人という特定の存在に依存するのではなく、自分自身の足で立ち、多様な人々と繋がり、自分だけの「第二の故郷」をこの新しい土地に築いていくこと。それが、真の心の安定と成長に繋がる道だ。

この旅は、決して簡単な道のりではないかもしれない。でも、君は一人じゃない。一歩踏み出す勇気さえあれば、必ず新しい景色が見えてくるはずだ。